球春が待ち遠しい。今年からドジャースのユニホームに袖を通す大谷翔平選手。世界一を担うチームで海の向こう。やはり国内で38年ぶりの日本一を果たした阪神の連覇が身近い。阿部慎之助新監督が率いる巨人などが阻止するのか。寒気が熱くなる思いでワクワクしています。なかでも阪神ヘッドコーチ、平田勝男さん(六四)の動向に興味は尽きません。平田さんには一度だけ取材のご縁もあります。昭和四十年、当時刊行していた長崎新聞夕刊の読み物として「東京の長崎人」と銘打ち十人選び、各界の代表らしき人を紹介しました。その一人です。当時、東京六大学、明治の野球選手で、松浦市今福中学から海星で遊撃手として甲子園の土を踏み、明治のルーキーでした。監督だった島岡吉郎さんに会いたかったのも取材の動機の一つ。正直なお話です。闘将とか名将とか言われ人間的な魅力にも惹かれていました。別れ際にポンッと言った「選手としてもいいが(将来は)管理、指導者で力を発揮するよ」が心に残っていました。この言葉は夕刊記事で割愛、初めて披露しました。阪神で二遊間を組んだ平田、岡田彰布(監督)は名コンビで遊撃守備の名手で活躍。引退後は指導者に転身、コーチ、二軍監督として島岡さんの言葉は的を得ていました。岡田監督が復帰した昨季、ヘッドコーチで一軍へ。監督を隣で支え、選手を巧みにつないだパイプ役の手腕は絶賛もの。選手と一定の距離を置く岡田監督とは対照的に、選手に気さくに話しかける。時には熱くなる岡田監督をいさめるのも仕事のうち。二軍降格になった選手にはズバリ理由を説明するなど、選手に熱い信望をされている。頼れる相棒のヘッドコーチに寄せる岡田監督の信頼は並みじゃない。余談ながら阪神の日本一決定後のビールかけで飛び出した名言がグッズ化されるのも平田さんらしい。「平田ヘッドコーチおつかれ生ですフェイスタオル」。ファンの人気を呼んだそうです。ふるさと松浦市今福町出身の平田さんが昨年、市役所を訪れ、阪神のユニホームを着た友田𠮷泰市長の「おめでとう」に顔をくしゃくしゃにして喜んでいたのを、風のたよりに聞きました。球春到来とともに本格的な春の訪れ。ファン待望の連覇は、どうなのか。気をもむシーズンが始まります。そうでした。明大のグラウンドを取材で訪れたのもこんな頃。島岡吉郎〝御大〟の巨体をゆらしながらのシートノックが目に浮かびます。モノクロ映画の一シーンみたいに。阪神・平田勝男ヘッドコーチ 2著・三軒茶屋ニコみどりの風
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