こぶれ2021年11月号
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大相撲秋場所。下馬評にたがわず新横綱・照ノ富士が5度目の優勝を決めました。本県からは活躍する力士もまだいなく寂しいものです。そんなことを考えていると土俵上に浮かんだ力士がいました。本名の小林秀昭をもじって「コバ」の愛称で先輩から目をかけられていました。後輩からは面倒見のよさで慕われていた。こんな人柄が身上でした。平成4年に大相撲を引退した元小結、両国(長崎市出身、諫早農―日大)。土俵では右四つ、寄り、突っ張りの攻撃型。巨腹をあおって前に出る相撲は迫力があった。時にみせる左からの投げにも。けいこ場よりも本番で思い切りのよい力を発揮した。玄人に人気でした。両国には数字の3と縁がある。この数字が相撲人生の華はと言っていい。昭和六十二年春場所に入幕。3場所目に小結を射止める。小結を通算3場所務つめた。小結になった時、当時あった夕刊にいい話なので無理して突っ込みました。まだ両国、無名。相撲に詳しくなかった本社デスクが「両国? ないんだな」と念押しの確認、筆者にも懐かしい思い出です。また横綱・千代の富士から勝負に勝ち金星3個を挙げました。平成元年の九州場所。翌年の春場所、名古屋場所で。当時・無敵の千代の富士に平幕で対戦。横綱から3回、通算でも3個の金星獲得で話題になった。 「7年間の土俵で最も思い出深いのは、横綱に3番勝ったこと」。その一番。初の殊勲となった九州場所(6日目)は、圧巻でした。千代の富士には過去9戦全敗。気持ちをふるい立たせ、最強者に挑んだ。激しい突き、押しで攻め込む。土俵ぎわに追い詰め、下から押し上げ、横間違い綱を土俵の外に押し出す。学生時代からの腰痛が、結局、命取りになりました。この持病などで低迷、初場所は幕下に落ちました。今後は部屋付きの親方として後進の育成に励んでいる、という。適役です。 「寂しさもあるが、ホッとした気持ちも」と土俵を去るときの弁。人間味ある力士だけに〝両国二、 三世〟の誕生が楽しみです。十一月十四日から九州場所の開幕。横綱・照ノ富士を軸に大関・正代、貴景勝、関脇・御嶽海など熱戦が繰り広げられます。そろそろ両国が育て上げた力士が土俵に登場してもおかしくはない。待っているファンも多いでしょうよ。と……エンドマークしようとしたらテレビのニュース速報。 「横綱白鵬引退へ」。当然、モンゴル屈強の若者で後進育成。両国さんウカウカできない。白鵬親方に負けず後進育成でひと勝負ですぞ。軍配はどちらに。                         とな  2元小結両国さんのこと著・三軒茶屋ニコみどりの風

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