みどりの風著・三軒茶屋ニコ 六月三日で普賢岳大火砕流から三十年になります。 この日、午後四時すぎ、NBC(長崎放送)の夕方の定時番組MC(メーン・キャスター)のアナウンサーYさんから電話がありました。 話に興が乗りかけた時、 「ちょっと待って!」話を折るような大声。ふだん物静かで冷静な対応が売り物だけに「ん……!?」とあっけにとられました。 気分が納まったのか「今、島原の現場(マスコミ陣が定点観測している場所)中継を見ているがネ、空がどんどん暗くなり異様だ!」。 また叩きつけるような荒い声に筆者も間をおき「……(電話を)切りましょうか」。 Yさんの興奮ぶり、マスコミ人の勘でしょう。 間もなく報道部の電話が鳴りっ放し。「やはり来たか」。これが序章でした。 四十三人の死者・行方不明者が出た一九九一年六月三日の雲仙・普賢岳大火砕流惨事。三十年たっても昨日の出来事みたいに脳裏にやきついています。 噴火災害の恐怖と伝承がどんなに大切なことか踏ふまえながらです。 長崎大工学部の後藤恵之輔元教授、今は退官されお会いすることはありませんが普賢岳惨事で忘れることができない一人です。 島原地方に「侗庵さんとヘビよめ」という昔話がある。 領主が強欲なため普賢岳の山の神・蛇を怒らせ、大地震、大津波を起こす──「この話は寛政四年の〝島原大変肥後迷惑〟の大惨事を後世に残す伝承手段だった」という。 後藤さんはこんな自然災害に関する民話を集め、災害科学の立場から分析、活用をまとめていました。 民話は「災害への心構え、注意、防災対策など先人の知恵で分かりやすい形で伝えてくれる」からです。 後藤さんは噴火中に長崎市での自然災害科学総合シンポジウムで研究発表しました。 全国に伝わる民話から、自然災害に関係のある七十七話を抽出。これを地震、火山噴火、洪水など九種類に分け、その民話からくみとれる災害に対する示唆・教訓を引き出した。 例えば、福岡県での「ツガニの恩返し」が土砂災害、島根県の「やまたのおろち」が洪水と。 後藤さんはテレビ人気番組だった「日本昔ばなし」を見てハッと気づいた、という。 物語のテーマである洪水や干ばつなど、自然災害を表現しているのが竜や蛇。人間の恐怖の存在でもある。 そこに災害の恐怖を伝承する手段としての民話があったんです。人間味のある着想だと思います。 島原地方は、お普賢岳の恐怖に三十年前から四年さらされ、地元住民はあてのない避難生活、ようやく生活が元にもどっています。 この災害が「現代の民話」として語れる日を祈り、待ちたいものです。雲仙・普賢岳災害から30年2
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