こぶれ2020年6月号
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みどりの風著・三軒茶屋ニコ 蛙始鳴(かわず はじめて なく)は七十二候の一つ。 今年は五月五日で、冬眠から覚めたカエルの鳴き声が盛んになり始める頃です。昨春は四月十日に登場したと記憶しています。庭の古い大皿を常宿としているのをながめながら朝夕「カエルさん、カエルさん」と小声で呼びかけ心待ちしているが、今年はやって来ない。 五月も中旬、居場所を変えたのか。まさか? 「蛙始鳴」をタイトルに心温まるものをと考えていましたが(みどりの風)締め切りが近い。「こりゃいかん」と慌てて取り上げたのがコロナ感染で死去されたタレント・志村けん(本名 志し村むら康やす徳のり)さん。70歳。喜劇界の巨星、喜劇王、コント王など志村さんを惜しむ声は、数限りない。笑いの世界で唯一無二の人だったからでしょう。 ザ・ドリフターズの付き人を経てメンバーに加わり、テレビ番組「8時だヨ!全員集合」に出演、出身地の東京都東村山市の「東村山音頭」をコミカルにアレンジしてヒットさせた。ドリフの加藤茶さんとの「ヒゲダンス」など次々にブレーク。幼児、子供にもわかりやすいキャラクターで人気者になりました。 軽い身のこなし、テンポとスローなセリフも魅力でその芸に引き込まれます。コント一筋で独自の地位を築き、長く第一線で活躍しました。人気を保つのは人生と同じで上り坂もあれば下り坂もある。筆者が独断で感じた低迷期もありました。 これを打破したのが顎の下で手を横にした「アイ~ン」。この頃が志村さんも下り坂で「ナインティナイン」の岡村隆史さんが〝救世主〟に。岡村さんが顎の下で手を横にする動きをまねて「アイ~ン」とやり始めて大流行。当然ながら志村さんの人気も再浮上。これは志村さんも認めていて「後継者は岡村隆史」と言い切っていた。志村さんが初めて見せた人間くささでしょう。 私事ながら好きだったのは加藤茶さんとの「ヒゲダンス」で気が滅入ったり、落ち込んだ時にこれを見ると不思議に立ち直ったのを思い出します。終始、志村さんが追い求めたのは動きの笑い。海外に通じる普遍性がありましたネ。外国の子供たちにも、その笑いは届きファンは定着していました。 心残りはいっぱいあります。一つは志村さんの主演映画「キネマの神様」で脚本と監督を手がける山田洋次さんとのコンビ作品を観れないことです。無情すぎますな。 コロナは猛威の真っ最中。これを救う特効薬もない現在、顎の下に手を横にやる「アイ~ン」でも唱えたくなりますヨ。アイ~ン2

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