こぶれ2017年8月号
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大スターだった勝新太郎さんが逝いって没後二十年と銘打った代表作「座頭市」シリーズの映画放映がテレビで続いています。 映画「座頭市」は全部で二十六本作られた。 これは渥美清の「男はつらいよ」、戦後の三益愛子の「母もの」、森繁久弥の「社長」シリーズに続く数である。 勝新そのものが「座頭の市いつッつあん」。初めて出会ったのが東京五オリンピツク輪のころ。二十三、四歳だったが大映映画「座頭市」の面白さにシリーズを欠かしたことはありません。 そうするうちに勝新さん以上に興味を持ったのが、出演俳優の後ろに必ず「原作 子母澤寛」と出るものだから「勝新に負けないすごい作家がいるもんだ」と驚きに変わりましたよ。 子し母も澤ざわ寛かん。明治二十五年北海道生まれ。 読売、毎日新聞の記者をつとめ、昭和三年「新選組始末記」を出版。 戦後は崩れ去る幕末遺臣と江戸風物への深い愛惜から幕末維新歴史小説に独自の境地を開く。 昭和三十七年菊池寛賞受賞、代表作に「国定忠治」「勝海舟」「父子鷹」など。 昭和四十二年死去。 どこを調べても子母澤寛さんの経歴はこんなもの。 肝心の「座頭市」は全然ない。!?……。 図書館通い、いろんなツテを求め「座頭市」を探しますが見つかりません。 勝新=子母澤寛の関係はお手上げ状態。 筆者の不明を嘆きつつも根気が尽き、原作者と座頭市のことも忘れかけていた昨年冬。難問一挙解決。 金脈を求め探し疲れたヤマ師が一服したタバコをポイ捨て、その地面下に金脈発見。 こんな表現しかできません。 それも筆者の蔵書の中に見つけたのです。お笑い草。 子母澤寛さんの得意とする歴史随筆、古びた文庫本「ふところ手帖」(一九六一年九月、中央公論社刊)に収録されている「座頭市物語」。どこかの古本屋が入手先でしょうな。 原稿用紙だと二十枚足らずの小品。 時代物にしては今風のエッセイ調にサラリと書き流しています。 物語は天保の頃の人で素性も不明。 あんま渡世しながら関八州を股にかけ、みんなから座頭と呼ばれていた。いい年配で、でっぷり押し出しがよく(勝新のイメージと重なります)すごいカンで壺つぼの中のサイコロの目を読むことが天才的。 しばらく世話になった飯岡の助五郎一家の、笹川の繁蔵に対する襲撃事件(天保十五年)の汚さに杯さかずきを返し姿を消す。 短いスペースの中に淡々と的確に描写されています。 子母澤さんの凄すごさを実感です。 枚数の上では小品ですが、内容は魅力いっぱい。 料理次第で大作になると直感しました。 それが勝新のキャラと魅力が混じり、映画で大ヒットにつながった、ようです。 名監督で気鋭の脚本家、新藤兼人さんの「海を渡った座頭市」が難解ですが、お気に入りです。 座頭市の〝不滅の人気〟のナゾは、演じた勝新なのか、原作・子母澤寛の小品にあるのか、この勝負、永遠に続きそうです。 名原作と座頭市2
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